• Data Privacy Day Japan

DPD コラム

死後のプライバシー

今回はデジタル社会の中で、本人の死後、プライバシーや個人情報との関わりについて、どのように向き合ったら良いのかを考えます。

数年前アメリカのデラウェア州で、「故人のデジタル資産に遺族がアクセスできる。」という法律が制定された、ということが評判になりました。これに対し多くの人は、自分が死んだ後に、自分のデータに家族がアクセスする、ということにむしろ不安を感じたようです。意図せず自分のデータにアクセスされるケースとしては、公開を前提として利用しているフェイスブックやSNSの写真、プロフィール、書き込み等についても、事件・事故の被害にあった場合等、想定できない程多くの人の目にさらされる、という例もあります。

“終活”という言葉が出て久しいですが、基本的には、「自分の死後に備え資産・物の整理をどうするか?」ということと、「情報・データをどう整理しておくか?」と考え方は同じです。しかしここには、情報・データという物が目に見え難く、どこにどのような形で存在するのかが分かり難い、という特有の問題があります。本人が居なくなった場合、家族がそういった情報・データを探し出すのは困難でしょうし、パスワードが設定されていればアクセスも困難になります。或いは反対に、本人の死後、PC等に保存した情報やデータには、家族・第三者が容易にアクセスできてしまい、保存した情報・データに機微な情報や、深くプライバシーに関わる物が含まれているというようなケースの場合、それに対する不安があるのではないでしょうか?

現代のプライバシーに対する考え方や、個人情報の取扱いに於いては、個人の情報は本人によるコントロール権があるとされています。故人となった場合、このコントロール権は当然及びません。
また、やや状況が異なりますが、「負の情報」がネット上に出回り、被害を受ける、というケースもあります。この場合は、「消される権利」という問題も出てきますが、これもコントロール権の問題とも言い換えられます。

自らに関わる情報・データはどこにあり、どのようにコントロールできるのでしょう。
<PC・デバイス・メディア・クラウドに保存したデータ>
■データ消去ソフト等の利用
「パソコンのデータ消去ソフト」の一種で、ある一定期間アクセスが無い場合に、自動的に指定したデータを消去してくれる、終活を目的としたソフトも存在します。使い方によっては便利ですが、データ復元の可能性まで考慮すると不安が残るかも知れません。スパイ映画のようにデバイスが燃えてなくなるような物は現実的には難しいでしょう。
また、PC以外のストレージや媒体、クラウドに保存したデータの扱いも考える必要があります。

<SNS・ブログ・Webサイトの利用に伴うデータやアカウント情報>
■アカウント停止サービス
SNS・ブログ等を利用している場合は、死後等に備え、アカウントの停止を事前に設定できるサービスもあります。また本人のみならず、故人の近親者の削除依頼も可能なようです。こちらの利用する場合は、本人が利用しているサービスに対して個別に設定する必要があります。

■他者に依頼する
家族や知人等に依頼しておく。
或いは専門家に依頼する、という方法もあります。
相続や、遺言等、法的な手続きを行う司法書士や行政書士等は、ネット関係のアカウントの停止を業務として受けている所もあるようです。

また、負の遺産だけではなく、“デジタル資産”として価値のある物の処分にについても同様です。価値がある物でしたら、相続の対象となるものですし、後継者が継続する意味もあるでしょう。

以上見てきた通り、決定的な解決法は見あたらないかも知れません。
個人情報保護の基本的な対策でも、「不要な情報を持っているだけでリスクが増すので、持たない、廃棄する。」となっています。
情報をコントロールする前に、自分の死をコントロールできるのか、などと禅問答のようなことを考えても仕方がないので、やはり事前に残しても良い物とそうでない物をきっちり分けて、情報・データの整理をしておいた方が良さそうです。